海外(台北パック)視察報告書 平成二十年六月
発展著しい台湾包装産業 規模毎回拡大「台北パック」
(社)東京包装協会(会長・太田幸一氏)は、台湾で開催中の台北国際包装工業展覧会他2展覧会に去る
六月二十日から二十二日まで二泊三日の日程で視察、調査研究を行った。
台北国際包装工業展覧会
台北国際食品展覧会
台北国際食品機械技術展覧会 視察、調査研究概容
期間 2008年 6月18日から21日まで
会場 台北世界貿易中心南港展覧会会場
6月21日午前10時から一階から五階までの全会場を一日かけて視察した。包装工業展区では、包装機械、包装材料の展示品を見学した。包装機械・材料は、レベルの高さにまず、驚かされた。包装材料では台湾の大手企業が殆ど出展し、バランスの取れたトータルな包装展になっていた。紙・板紙製品・段ボール製品、プラスチック、金属、ガラス、木製品など新製品や新技術の開発の努力が結実していた。台湾でもリサイクル市場が拡大する傾向にあり、リサイクルの牽引役の役割も果たそうと、各出展メーカーの努力がかい間見ることができた。包装機械では、以前の展示会では日本の梱包機メーカーをまねたそっくりの包装機が多く出品されていたが、自然淘汰されて現在では二、三社に激減し、出品企業は一社に留まっていたのが目立った。その一社の展示品を見ると、やはり生き残るだけのハイレベルの技術と生産能力を保持しており、梱包機、封函機など梱包荷造関連の総合機器の製造を行い、供給できる体制を整えていた。業界で生き残るには、トータル的な発想で、周辺機器まで総合的に生産供給して行かなければならないことを如実に物語っており、良い教訓となった。今、訴求されている包装における潮流と将来的なトレンドが探れた。さらに包装の前工程である食品製造機械と包装後のMH物流機器などの展示も同時に見られた。包装材料加工機械などを合わせたトータルシステムとしての展示へと移行していた。すなわち食品の製造から包装材料の供給、充填、搬送までの一貫した展示が見られ、加えて海外からの出展も見られた。今、品質、衛生、安全、環境などが世界的な傾向として重要なキーワードとなっている。包装産業界においても品質の保証、衛生、安全の確保、労働安全性への対応、環境問題への対応、対処などのニーズが高い。また情報伝達のための表示、販売を支えるデザインなどの商品性の役割も包装にとっては重要なことである。食の安全・安心を求めてトレーサビリティの重要性が認識される中で、台北パックは、これから包装が果たす役割を示唆していた。わが国の包装機械は、品質、安全のキーワードを基に包装機が開発されており、さらに衛生安全・安心のためのトレーサビリティを考慮した衛生性と省電力・省エネルギーなどの環境を配慮した機能性が訴求され、その方向に向かった機械作りが行われている。台湾の包装機メーカーもこのような訴求を取り入れた包装機の開発に取り組んでいることが出展品から伺うことができた。包装機械は大別すると多様化を反映した汎用化と、従来からの高速化との二極分化傾向にある。包装機械の高速化は、シンプルで耐久性の高い単体機能が多く、生産性を上げるための高速化が求められる。生産効率と同時に品質の安全性が訴求され無人化と相まって根強いニーズがある。一方、汎用包装機械化は商品の多様化が進み、多品種少量生産が、主流を占めるようになると、フレキシブルに対応できる汎用化のニーズが強い。サイズチェンジの切り換え時間短縮、簡単にできる形状変更、容易な条件設定などのニーズが強いが、複雑な機構になると欠点がある。IT化が進むなか、知的機能を備えたコンピューターを搭載したメカトロ包装機の需要が強く、サーボモーターの普及、包装用ロボット活用等が進んでいる。未熟者のオペレーターでも容易に稼動できるようなタッチパネル表示、始動時の条件設定、温度の自動設定などの学習機能を備えた知能形包装機械の要求も強いという。まだわが国の包装技術に達するには時間を要しそうだが、追い着け追い越せの勢いは感じられた。包材加工機械では、グラビア、フレキソ、宛名などの各種印刷機をはじめ、ブロー形成、各種ラミネーターなどのプラスチックを主体とした製袋機、紙器や段ボールの製箱機、打抜き機、スリッター、カッター、製缶機、緩衝材製造機などが幅広く出品されていた。包装材料を製造する加工機械は、生産設備投資のために投資費用に対する効率が求められコストパフォーマンスが訴求され、スペースが少なく、省力化が強く要求される。さらにIT技術革命によりコンピューター搭載機械が多く、制御が迅速、かつ正確になった。特徴としては、コンピューターサーボ制御による高速安全性と切り換え時間の短縮である。特に、製袋機はコンピューターのインテリジェント化によって、学習機能を備え、迅速な条件設定、ロスの減少化、高速化、均質化、サイズチェンジ短時間化などの向上を目指しているところが伺えた。また、多種多様なスタンドパウチ、それに注ぎ口を取り付けた製品など出品各社独自の製袋機が点在していた。緩衝材はポリエチレンフルムに空気を挿入する装置のみ出品されていた。
包装展のブースは年々拡大し、包装技術のハイレベルの域に達しており、日本の技術と何ら遜色のない製品群が整然と展示されており、華やかさも加わって感嘆の余韻がいつまでも残る展示会の印象だった。
台湾の包装展を見て
一時期、レジ袋、ポリブクロ、包装テープ等の包装資材を大手石化メーカーと中心に台湾の数多くの中小企業が日本の数多くの中小企業とタイアップして日本に輸出していた。しかし今回の包装展の製品の中の汎用品については中国で生産している例が増えているように思われる。現在、台湾の包装資材業者は消費者へのきめ細かい包装資材をアメリカ等商圏を中心に輸出している、また従来は日本が輸出していた東南アジアへの商圏を売り込んでいる。今後台湾で高い技術力を生かした商品を、中国ではコスト競争力を生かした汎用品生産するシステムが定着するように思われる。今後、日本の包装資材業者はレトルト包装などの最先端軟包装技術や優れたクオリティーの包装システムを技術指導して、親日的で安定した品質の製品、機械システムが製造できる台湾の包装資材業者とタイアップして東南アジア、中国の現地のメーカーへの商圏の拡大なければ、今後、日本包装業界は世界の潮流の取り残されるように思われる。台湾は我が国からも近く、比較的信頼関係が築きやすい環境にあるので小ロット、多品種の商品の委託先には最適だと思われる。